痰に血が混じっている…!
緊急性の高い症状
痰に血液が混じる状態を「血痰(けったん)」と呼びます。以下のような症状がみられる場合は直ちに救急車を要請してください。
- 血痰が大量にあり、止まらない場合
- 胸痛や息苦しさなど、他の症状が伴う場合
もし救急車の要請が必要か迷う時は、救急安心センター「#7119」にご連絡ください。「#7119」に連絡すると訓練されたスタッフが症状を確認し、状況に応じた助言を行ってくれます。
血痰(けったん)と
喀血(かっけつ)の違い
血痰は痰に血液が混じる現象で、喀血は痰の大部分が血液である状態です。どちらも口腔や鼻、喉、気管支、肺、食道・胃からの出血を示しており、血痰が見られた場合でも安易に「これくらい大丈夫」と油断するのは禁物です。
痰に血が混ざっているとき
考えられる疾患
肺結核
肺結核とは、肺や気管支に結核菌が感染し、肺胞で増殖することで発症する病気です。結核菌の感染者のほとんどは、自身の免疫力によって結核菌の増殖を抑え込むことができるため、生涯にわたって発症することはありませんが、約5~10%が肺結核に至ります。特に糖尿病、がん、低栄養状態、免疫抑制薬や副腎皮質ステロイド、生物学的製剤を投与している方、胃切除を受けた方、HIV感染者など免疫力が低下している方が発症しやすいです。
慢性の咳(2週間以上)、体重減少、倦怠感、血痰や喀血などを主な症状としていますが、これらの自覚症状が目立たず、診断や治療が遅れてしまうことも少なくありません。
非結核性抗酸菌症
非結核性抗酸菌症は、結核菌以外の抗酸菌に感染することにより発症する病気です。特に、MAC菌の感染による肺MAC症が多く、その割合は90%以上と報告されています。結核菌のように人から人へ感染することはなく、水や土壌、ほこり、水道、貯水槽などから吸引され、長期(数年~10年以上)にわたり進行します。予後(治りやすさや回復の見込み)は良い場合もあれば悪い場合もあり、これは主に感染する菌の種類や病態によって異なります。慢性的な咳、血痰、呼吸不全などの症状が出ることもあります。
気管支拡張症
気道の壁が拡張し、元の状態に戻らない病気です。この病気は2つに分かれており、生まれながら気管支が拡張している先天性のものと、肺結核や細菌性肺炎などの重度の呼吸器感染症や非結核性抗酸菌症などの慢性的な呼吸器感染症、膠原病、アレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)などによって後天的に発症するケースに分類されます。
拡張した気管支は緑膿菌などの細菌に感染しやすく、咳、血痰、発熱、倦怠感、呼吸困難、体重減少などの症状が現れることがあります。
肺炎
肺炎は細菌、ウイルス、カビによって肺に炎症が生じる病気で、咳や痰、喘鳴、息切れ、発熱などの症状が特徴です。体力や免疫力が落ちている時に発症しやすく、重症化すると血痰が現れることもあります。体の抵抗力が弱まった際には重症化リスクが高くなるので、特に注意が必要です。
肺がん
肺がんは、肺や気管支の細胞から発生する「原発性肺がん」と、他の部位(大腸など)から肺へ転移した「転移性肺がん」に分けられます。悪性腫瘍は良性のものと違い、正常組織を侵して増殖・転移します。肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、大細胞がんなど多岐にわたり、病期によって全身の状態や治療法も異なります。
咳や痰、血痰、発熱、息苦しさなどのような、一般的な呼吸器症状が現れることもあれば、転移するまで無症状で進行するケースもあるため注意が必要です。
肺塞栓(エコノミークラス症候群)
血液の塊(血栓)が肺の動脈を塞いでしまう病気です。主な原因は、足の深部静脈血栓(足の静脈に生じた血栓)です。長時間同じ姿勢でいると血流が滞り、血栓形成のリスクが高まります。
動いた時の息苦しさから現れ、その後に胸痛や胸が押さえつけられているような感覚、血痰、下肢の浮腫などの症状が現れます。重症化すると呼吸困難を引き起こす危険があります。
その他に考えられる原因
- ストレス
- 鼻出血症
- 急性扁桃炎・咽喉頭炎
- 副鼻腔炎
- 扁桃周囲膿瘍
- 喉頭がん・咽頭がん
- 声帯麻痺
- 肺動静脈瘻
- 僧帽弁狭窄症・肺水腫
- 白血病・血友病
- 血管炎
痰に血が混じっているとき行う検査
少量の出血の場合
聴診や血液検査(貧血、炎症の確認、輸血のための血液型判定)、胸部X線検査、胸部CT検査などを行います。
CT検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介します。
肺炎・肺結核が疑われる場合
喀痰培養検査で痰を調べ、原因菌や結核菌を見つけ出します。
肺がんが疑われる場合
痰中のがん細胞の有無を確かめる喀痰細胞診検査と、胸部CT検査、そして組織を採取する気管支鏡検査を実施します。
CT検査、気管支鏡検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介します。
原因不明の場合
気管支鏡検査を通じて出血部位と原因を特定します。
気管支鏡検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介します。