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胸が痛い

胸の痛みを起こす要因は3パターン

胸の痛みには様々なタイプがあり、大きく3つのカテゴリーに分けて考えることができます。これらの分類を理解しておくことで、より適切な検査を行い、正確な診断と治療に結びつけることが可能になります。

1. 胸の表面で感じる痛み

この痛みは通常、「チクチクする」や「刺すような」と表現され、胸壁の神経や筋肉の炎症、外傷、帯状疱疹などが原因で起こります。

2. 胸の深部で感じる痛み

これは「内臓の痛み」とも呼ばれ、心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓症などが原因であることが多いです。

3. 胸以外の原因による痛み

消化器系の疾患や呼吸器系の疾患、骨や筋肉の問題などが胸の痛みとして感じられることがあります。

胸が痛い…症状のチェック

胸の痛みは緊急性が高い場合があり、特に循環器系の病気が疑われる時は迅速な対応が必要です。 

緊急性の高い胸の痛み 

虚血性心疾患

  • 突然の強い胸の痛み:
    胸が締め付けられる感じ
  • 圧迫感:
    胸の上に重いものが乗せられたような感覚
  • 移動する痛み:
    前胸部から背中にかけての強い痛み
  • その他の症状を伴う:
    呼吸困難、嘔吐、意識低下、失神を伴う胸の痛み

これらの症状がある場合、自力での受診が難しいと感じたら救急車を呼ぶべきです。

迷った時の対処法

救急車を呼ぶか迷った時は、救急安心センター事業「#7119」を利用してください。訓練を受けた相談員が症状や状況を確認し、適切なアドバイスを提供します。

胸の痛みの原因はストレス?
考えられる疾患

 肺や胸膜の疾患

胸痛喘息

胸痛喘息はあまり馴染みがないかもしれませんが気管支喘息の一種で、胸痛を伴う特徴があります。咳や息切れなどの典型的な喘息症状が伴わない場合もあります。女性に多くみられ、特に40歳代から50歳代の発症が多いとされています。
原因は、気道の炎症と狭窄で、アレルゲン(ダニ、花粉、ペットの毛、煙草の煙など)にさらされることで引き起こされることがあります。
症状は胸の中央、左側、右側、または背中に胸痛を感じることがあります。鋭い痛み、刺すような痛み、締め付けられるような痛み、鈍痛など感じ方は様々です。咳、深呼吸、運動などによって誘発されることがあります。
診断には、聴診、肺機能検査、誘発試験、採血などを行います。
治療には、喘息治療薬(吸入ステロイド、気管支拡張薬)、必要に応じて抗炎症薬、禁煙、運動、アレルゲン回避などの生活習慣の改善を行います。
胸痛は心臓病など他の病気の可能性もあるので、胸痛がひどい場合や呼吸困難などの症状がある場合は、迅速にご相談ください。

気胸

気胸は肺が破れ、空気が漏れ出て肺がしぼむ病気です。
主に若く背が高い男性にみられる「自然気胸」、外傷や事故などが原因の「外傷性気胸」、そして女性の月経周期と関連して発生することもある「月経随伴性気胸」があります。
気胸の典型的な症状には、突然の胸痛に続いて咳や呼吸困難があります。
軽症の場合(Ⅰ度気胸)は安静によって回復することもありますが、中等症以上では胸腔ドレナージや手術が必要になる可能性があります。
さらに、漏れ出た空気が胸腔内に溜まって心臓や大静脈を圧迫する緊急性気胸は、血圧の低下やショックを引き起こし、適切な治療が遅れると命を脅かす危険性があります。  

気胸

胸膜炎・膿胸

胸膜炎は、肺を覆う薄い膜である胸膜に炎症が生じる状態です。
この炎症は、肺炎球菌や結核菌などの細菌、ウイルス感染によるもの(細菌性胸膜炎、結核性胸膜炎、ウイルス性胸膜炎)、悪性腫瘍の転移による癌性胸膜炎、膠原病によるものなど、多岐にわたります。そのうち多くみられる原因は、細菌性胸膜炎と癌性胸膜炎です。
細菌性胸膜炎は、胸腔内に膿を溜める「膿胸」を引き起こすことがあり、咳や発熱、呼吸困難に加えて、深呼吸時に胸にピリピリとした痛みを感じることがあります。
抗菌薬による治療で改善されることが多いですが、場合によっては胸腔ドレナージや手術が必要となります。一方、癌性胸膜炎では、胸膜癒着術を選択することもあります。

肺炎

肺炎は、細菌、ウイルス、カビなどが原因で肺に炎症が生じる疾患です。
咳や痰、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、息切れ、発熱などの症状が特徴で、体力や免疫力が落ちている時には特に発症しやすくなります。抗菌薬を用いた治療が行われますが、治療をせずにいると病状が悪化するリスクがあります。
肺炎が進行し、胸膜に炎症が及ぶと胸膜炎を引き起こし、胸にピリピリとした痛みが生じることがあります。

肺炎

肺塞栓(エコノミークラス症候群)

肺塞栓症は、肺の血管に血液の塊である血栓が詰まることで発生する病気です。
多くの場合、足の深部静脈に形成された血栓が原因となります。長時間座り続けたり、動かない姿勢を保ったりすることで血流が悪化し、血栓ができやすくなります。
活動中の息苦しさが現れ始めてから、胸の痛みや不快感、圧迫感、血痰、下肢のむくみなどの症状を引き起こし、症状が進行すると呼吸困難に至ることがあります。

肺がん

肺がんには、肺や気管支の細胞から直接発生する「原発性肺がん」と、他の臓器から肺へ転移した「転移性肺がん」があります。悪性腫瘍は、正常な組織を侵食しながら成長し、他の部位へ転移する特性を持ちます。
肺がんには肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、大細胞がんなど、多様なタイプが存在し、診断時の病期によって全身への影響や治療法が異なります。がんによる胸痛のほか、がん性胸膜炎や骨への転移によっても、胸痛が引き起こされることがあります。

肺がん

悪性胸膜中皮腫

胸膜に発生する稀な悪性腫瘍は、肺を覆う薄い膜に生じます。
この病気の発症にはアスベストの吸入が関係しており、アスベストを吸入してから症状が現れるまで平均で約40年かかるとされています。
日本ではアスベストの輸入が1970年代に停止されましたが、使用禁止となったのはずっと後のことです。胸痛や咳、大量の胸水による呼吸困難や胸部の圧迫感などの症状がありますが、早期に特徴的な症状が現れず、発見が難しい病気です。
過去にアスベストに曝露された経験がある方は、定期的な胸部X線や胸部CTによる検査を受けるようにしましょう。

 心臓や血管の疾患

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)冠動脈(心臓を栄養する血管)が狭まることにより、心筋が一時的に酸素を充分に得られない状態を「狭心症」と呼びます。さらに、冠動脈が完全に閉塞して心筋が深刻な酸素不足に陥る状態は「心筋梗塞」と称されます。
これらの状態は胸痛や圧迫感などの発作を引き起こし、痛みが左肩、左腕、顎、背中、腹部へと広がることがあります。心筋梗塞の場合、心筋が壊死し、呼吸困難、意識喪失、不整脈、さらには心臓破裂に至るリスクがあります。

大動脈解離

大動脈の内膜に亀裂が生じ、急速に裂けていく病気です。
突然の胸痛や背中の痛みが特徴で、内膜の亀裂が広がるにつれて痛みの位置も移動します。

貧血

赤血球に含まれるヘモグロビンの量が不足している状態を指します。
胸痛だけでなく、動悸やめまいが伴うこともあります。

 神経・筋肉・骨の疾患

肋骨の骨折

激しい運動、事故、または強い咳によって肋骨が折れると痛みが発生します。
安静時は鈍痛ですが、身体を動かしたり咳や深呼吸をしたりすると痛みが増します。

肋間神経痛・帯状疱疹

肋間神経が障害されると「肋間神経痛」が発生します。通常は片側で、突発的な痛みが起こり、咳や深呼吸をすることで痛みが強まります。
この痛みの一因として「帯状疱疹」という病気があります。肋間神経(肋骨に沿って走る神経)の走行にそって水ぶくれと鋭い強痛を生じるのが特徴です。免疫力が落ちた時に発症する傾向があります。

心因性による胸痛

心臓神経症

検査で特に問題が見つからない場合でも、精神的ストレスが原因で胸痛や動悸、息切れなどの症状が現れることがあります。

ストレス・生活習慣

日常生活におけるストレスや不規則な食生活、運動不足、喫煙、肥満などが冠動脈の動脈硬化を引き起こし、それが胸痛の原因となることがあります。

胸の左や真ん中が痛い…
痛む場所から考えられる病気

痛みの部位に応じた特徴や考えられる病気・原因があります。
ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、症状が持続する場合や気になる症状がある場合には、適切な診断と治療のために医療機関への受診をお勧めします。

痛む箇所 特徴 疑われる病気や原因など
前胸部 ・胸が押さえつけられるような痛み
・痛みが1~5分持続する
(30分以内に解消される)
狭心症
・発熱など、風邪の症状が出た後に痛みが現れる
・深呼吸や咳などをすると痛みが強くなる
心膜炎
左~中心部 ・締め付けられるような激痛が15分以上も持続する
・不整脈や呼吸困難、吐き気、冷や汗などが出ている
心筋梗塞
胸~背中~腰 ・何かに刺されたような激痛が走る 解離性大動脈瘤
背中 ・呼吸すると痛みがひどくなる
・咳や痰、息切れ、動悸、呼吸困難などが出ている
胸膜炎
脊椎~肋骨 ・深呼吸や咳、大きい声を出すと痛みがひどくなる 肋骨神経痛
場所が特定できない ・チクチクした痛みが出る(数時間~半日続く)
・押すと痛むが、さすると落ち着く
・動悸や不整脈、呼吸困難などが出ている
心臓神経症
胸の表面 ・鈍痛が1週間程度続く
・体をひねらしたり動かしたりすると痛みが出る
筋肉痛
・体を反らす、肩を動かすなどの動きをとると、痛みが強くなる
・深呼吸や咳・くしゃみをすると痛みが出る
肋骨の骨折
・精密検査を受けても異常が発見されない
・ストレスや大きな心配事があると生じやすい
ストレス、うつ病

胸がズキン、チクチクと痛い…
痛み方から探す

 胸の痛みが発生した際には、その痛みの特徴をできる限り細かくメモしておくことが重要です。
医師への受診時にこの情報を提供することで、より正確な診断に役立ちます。また、胸痛に関連する他の症状や、考えられる病気・原因については以下となります。

痛みの現れ方 症状について 疑われる病気・原因・状況
ズキンとした痛み ・胸が刺されたような痛み
・風邪の後に痛みが現れる
心膜炎
・ピリピリ、チクチクとした痛みが出る
・時間が経つと皮膚に水ぶくれができる
帯状疱疹
チクチクした痛み ・胸の表面、もしくは浅い箇所に原因疾患が生じるケースが多い 肋骨痛
神経痛
肋間神経痛
筋肉痛
・痛みが長く続きやすく、経過するにつれて皮膚に水ぶくれができる 帯状疱疹
・熱が出る 心膜炎
胸膜炎
咳が出ると痛む ・咳をした時のみ痛みが出る
・咳をすると痛みがひどくなる
肺炎
気管支炎
肋骨骨折
呼吸する度に痛む ・息を吸うと痛みが出る
・息苦しさがある
肺塞栓症
(エコノミークラス症候群)
ピリピリ、
ビリビリする痛み
・一瞬だけ痛みが出たり、痛みが続いたりする
・片方の胸だけ痛むケースが多い
肋間神経痛
・症状が進行するにつれて水ぶくれが現れる 帯状疱疹
締め付けられるような
痛み
押さえつけられるような
感覚
・痛みが1~5分続くが、30分以内に解消される 狭心症
・中心部に激痛が現れ、15分以上も続く
・動悸や息切れ、めまい、脱力感などを伴う
心筋梗塞
体が裂けるのではないかと
思う程の激痛
・背中が痛い 大動脈解離
張るような痛み ・胸(乳房)が張ったような痛み
・ヒリヒリと乳首が痛むこともある
成長期
生理前
妊娠中
出産後(授乳期)
圧迫感
掴まれるような痛み
・急な強い不安感に襲われる
・めまいや動悸、息切れなどを伴う
パニック障害

受診の目安

先生生理前や妊娠、授乳期に起こる胸の痛み(乳房の張りや痛み)など、原因がはっきりしている場合を除いて、基本的には早めに医療機関を受診することを推奨します。
循環器系の疾患などは、時に命を脅かす状況に至ることがあるため、特に注意が必要です。  

医師に症状を伝えるポイント

受診時には以下の点を伝えると、より迅速に検査へと進むことができます。できれば、これらの情報をメモに記録して持参ください。

  • 胸痛が初めて現れた時期(例:数日前、今朝の何時頃)
  • 胸痛が発生した状況やそれが強まった時(例:運動中、咳をした時、安静時)
  • 発生する頻度と持続時間(例:毎日数回、数分間続く)
  • 痛みが和らぐ特定の姿勢(例:前かがみ、横になる)
  • 痛みの移動(例:胸から背中へ)
  • 胸痛以外の症状(例:息切れ、動悸など)